有限会社花やの前の美容室 代表取締役インタビュー
「美容師になろう!」の目的は人材が集まり育ち永く活躍できる美容業界にする事。そして、表面的な華やかさだけではなく、仕事の本質を大切に理念経営に取り組む企業が増えてきました。時代とともに「物」から「思い」へ価値観が変化した事の現れでもあると思います。「変わる!美容業界」と銘打ったこの特集。
今年で創立28年目を迎える「花やの前の美容室」。
ユニークな名前の由来は本文に書きましたが母親の美容室を継いで11店舗に拡大、東京進出もされました。
その経営手腕の基にあるのは美容師さんに永く働いてもらいたいという願い。雨宮社長のお話を紹介します。
有限会社花やの前の美容室 代表取締役 雨宮 健太氏物心両面の幸せを追求して永く活躍できる会社を作る1976年山梨県生まれ。
山梨美容専門学校通信科卒。
美容室を営む母の背中を見て育ち、美容師を志す。
高校卒業後、通信に通いながら他店で修行時代を過ごし1994年母の営む「花やの前の美容室」に入社。
2011年同社の代表取締役に就任。
時代の変化と共に改革を推し進め理念経営に徹し「人の辞めない会社」を作り経営の在り方、ノウハウを書いた著書(女性が働き続ける会社のすごい仕組み)を2016年に出版する。
現在、山梨・埼玉・東京に11店舗を展開中。
永く働ける会社を作る母は美容師でした。店舗付き住居で美容室を営んでいました。その美容室の前に「花屋」があり、電話で「花屋の前にある美容室なんですよ」と場所を伝えていた事がきっかけで、「花やの前の美容室」という名前になりました。
「花やの前の美容室」は1990年にオープン。当時は美容師も修行時代で多くの美容師さんが退社していくのを見ていて、子供ながらに、残念だなあ、どうしたら働き続ける美容室にできるのかなあ、なんてことを考えていました。
母の背中を見て育った僕は美容師になり、やがて母と働くようになりました。
カリスマ美容師ブームで会社は順調に成長しましたが、福利厚生や労務管理など一般の会社らしいことが何も整ってなく、その事が原因で人材が採用できなかったり、退社するという事態も起きていました。
これではいけない!一般企業のように雇用環境を整えてスタッフが永く働ける会社を作ろうと決意しました。
安心して働ける仕組み作り当時の美容業界は長時間労働、低賃金など職人気質、修行時代からの慣例を引きずる構造的な問題を抱えていました。
スタッフが永く働けるのと同じく、子供が将来「美容師になりたい!」と言った時に、お父さん、お母さん、学校の先生方に「それはいいね!」と心から喜ばれる、そんな業界でなければいけないと思いました。
その為にはまず自社から改革をし、業界で輝く存在になろう!そして業界の発展に貢献できれば、という想いを抱くようになりました。
まず着手したのが「労働時間の短縮」でした。
その為に、仕事も効率を上げ徹底的にムダを省く仕組みを作りました。そして、福利厚生の充実。女性が多く働く職場ですので、結婚・出産で退社する必要のない仕組みを構築しようとスタッフの子供専用の託児所を2008年に作りました。
当時は「お客様用ではなく、スタッフ用なの?」と言って驚かれました。口で言うのは簡単ですが、目に見える形で行動する事が大事です。このスタッフ用の託児所は僕の覚悟の現れでもありました。
それ以外にも給与保障などを整備して行きました。
出産後も女性が働き続けられるシステム(1)雇用形態 5時で帰れる「ショートタイム制度」、パートとして復帰
(2)就労時間・休日
残業ナシ、子供の急な発熱、学校行事の参加はいつでも休める
(3)託児所の完備
全スタッフの子供が利用できる。完全無料。
(4)給与保障
歩合給ではなく固定給で保障
(5)残業をさせないシステム
残業ナシ。研修、勉強会などは営業時間中に。
(6)子育て支援
勤続10年以上にの社員に適応。進学における教育手当支給。
※雨宮社長の著書より
社員が活躍できる会社を実現する経営理念改革には痛みを伴いますので、当社も例外でなく現在の状態に行くまでは紆余曲折がありました。しかし、やり遂げる事ができたベースにあるのは経営理念の存在です。
改革の途中で皆が同じ方向を見て将来に向かって進むことの大切さに気づき、素晴らしい師匠との出会いもあり「私たちの会社は美容業を通じて全従業員の物心両面の幸せを追求すると同時に、業界・社会の進歩発展に貢献します。」という経営理念ができました。
先ほどお話しした環境整備は勿論の事、これからお話しする教育制度についても全てベースになっています。
3つの力を育てる教育制度当社の教育制度には2種類あります。「考え方」と「技術」というカテゴリーです。そして考え方を中心に3つの力が必要と考えます。
ひとつめは「作業力」。「再現力」と言ってもいいかもしれません。
2つ目は「イメージ力」。お客様がこんな感じ、と言われるのを汲み取り形にする力です。
3つ目は「営業力」。ここで言うのは「聞き取る力」の事です。お客様のお悩みを聞き、提案できる事が大切です。
この3つの力がバランス良く育ち、美容師の力になります。
そして根底に流れるのは「フィロソフィ」です。聞きなれない言葉かもしれませんが、「人間として正しい生き方は何か」という人生哲学のような考え方です。
例えば日々の仕事にあたっては美しさを作る事、お客様をよく観察することなどが書かれています。
スタッフとの関係性を築く社長塾「フィロソフィ」でどんなにいい事を言っていても実行されなければ意味がありません。その為に、毎朝の朝礼で読み上げたり、社長塾で勉強します。
社長塾は金曜日の午前中に行います。
全スタッフが対象で社員だけでなくパートさん保育士さんも含まれます。パートさんの場合はその時間分の時給をお支払いしています。
社長塾はスタッフと私の直接のコミュニケーションの場にもなっていて相談がある人は社長塾のあとに場を設けています。
変わる!美容業界創業28年を迎え、お蔭さまで業績は順調で成長を続けています。
2012年には東京の中目黒へ出店、2014年に銀座へは新業態のサロンを出店しました。
2015年には株式会社ventoホールディングスとして組織改編し多角化経営に乗り出しています。
子供の頃から美容業界を見て来て、現場や経営を経験する中で美容業界は新たな時代を迎えていると感じます。
修行時代から正社員としての雇用環境が整ってきた今の時代。
そして今後は多様性の時代。目的に合わせて働き方が選択できる時代へと移って行きます。
当社も時代に合わせて変化、進化して行きたいと考えます。
しかし、その根底にあるのは再三申し上げた経営理念やフィロソフィにある、一言で申し上げれば人を大切にするという考え方です。
今後も業界そのものを良くするために、現場の美容師自身がやりがいを持続し、安心して永続的に働いていける環境を構築していきたいと決意しています。
最後に・・美容学生さんへ就職先のサロンを選ぶ際には、君たちが進む将来像をしっかり実行されているかどうかを確認して下さい。
例えば、新卒で入社した先輩たちがスタイリストデビューしてその後も活躍しているかどうか、という事。
なかなか長い先をイメージするのは大変でしょうから、最低限、そこは確認して一人前の美容師となって下さいね!
本社連絡先有限会社花やの前の美容室
〒400-0043
山梨県甲府市国母7-4-6
TEL: 055-237-55877
http://hanayanomae.com/
インタビューは甲府市にある国母店にて行いました。母親の営む店舗付き住宅で子供心に問題意識を持って美容業界を見ていた結果、時代を先取りした仕組みが出来たのではないかと思いました。42歳の経営者ですからこの先も大いに期待したいです。
(「美容師になろう!」編集長/荒井由美)
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是非、ご覧ください!